伝統的な健康食品として知られる梅干。
最近の研究で胃がんのもとになるピロリ菌の活動を抑え、動脈硬化を防げる可能性があることがわかってきた。
全国有数の梅の産地である和歌山県みなべ町。
特産はみなべ町で生まれた「南高梅(なんこううめ)」という大粒の梅。皮は柔らかくて果肉は厚く、種も小さいので梅干に最適だ。実際収穫した7割が梅干しに加工される。
みなべ町は、和歌山県立医科大学や近畿大学などとの共同研究で、胃がん胃かいようの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌の活動を抑える効果があることを発見した。
梅干は、ピロリ菌の動きを阻害し、胃がんを抑制。
成分分析が専門の宮沢近大教授によると「梅干しの中に含まれている『シリンガレシノール』と呼ぶ抗酸化物質が効果のカギを握る」という。ピロリ菌が泳ぎ回っている液体にこの物質をごく少量(0.05%)溶かすとほとんど動きが止まる。
「梅干を1日1、2個食べればピロリ菌の活動を抑える効果が期待できる」と宮沢教授。
和歌山医大は人間の体内でも同様の効果があるかどうか調べるため、愛知県がんセンターと共同で同町の町民ら約千三百人の胃の状態を検査した。梅干の食習慣のある人ほど胃が健康で、ピロリ菌の感染度合いも低かった。
梅を食べさせることで炎症の軽減とがんの発生を抑制
胃炎や胃がんの原因になるピロリ菌。ピロリ菌をネズミに感染させると人と同じように慢性胃炎を発症する。そこに発がん物質を加えると、高率で胃がんができるが、同時に梅を食べさせることで炎症の軽減とがんの発生を抑制できた。
住民健診で、日常的に梅を食べている人と食べていない人をグループ分け、胃粘膜を病理組織学的に調べたところ、食べているグループは炎症の程度や粘膜の萎縮が軽かった。
梅干は、動脈硬化も抑制。
さらに血管細胞を使った実験で、梅の果汁成分に動脈硬化につながる血管細胞の異常増殖を防ぐ効果があることも発見した。